「美術部の部長って、誰だったんだ?」

「え…知らなかったんですか?」

「ああ」

「今は引き継いで秋山さんですが、その前は僕ですよ…」

「ええ?!そうだったのか?」

「ええ…」

「でも冬馬、一度も部長とか呼ばれてなかったよな?」

「ええ、名ばかりの部長ですからね…やる事と言ったら、部長会議に出席するぐらいですし…」

「いや、でも…」

「ちなみに副部は、ジャンケンで決めてますよ、毎年…」

「じゃあ、部長は何を基準に決めてるんだ?」

「あぁ…」

冬馬は遠くの方を見ると、答えた。

「…出席日数の一番多い人です…」

「ああ!なるほどなぁ」

椿は手を叩いて納得した。

「それじゃ、しょうがないよなぁ」

「ええ…かなり不本意ですが…」

もう終わった事とは言え、冬馬はフクザツな表情を浮かべると、ため息をついた。

「ははは…そろそろ行くわ。じゃあ、またな」

「ええ、また…」

椿はひとしきり笑うと、美術室を出て行った。




二月なかばの放課後…空からは、白い雪が降り始めていた。

雪を見ながら廊下を歩いていると椿は、ふと、将来やりたい事を思いつた。

「…老後に油絵かぁ…悪くないなぁ…」


ずいぶん先の話のようだが…


(おわり)