「どうも、ありがとうございます…」

二人は紙コップを軽く打ち合わせると、一気に飲み干した。

「引退の打ち上げとか、やんないの?」

「ええ、うちはそういうのやんないですね…」

「ふ〜ん…でも、ちょっと寂しくねぇ?」

「う〜ん…そういう所、皆あっさりしてますからね…片付けが終わったら、いつもみたいに帰って行きましたよ」

「そうゆ〜もんかぁ…」

何だか椿の方が寂しそうだ。

「あ、そうだ椿君、さっきの事黙ってて下さいね」

「え?何の事だ?」

「絵を持ち帰るって事です」

「え?何で?」

「木枠とキャンバスは部費で買った物ですから、本当は持って帰っちゃいけないんですよ…」

「へぇ〜」

「置いてっちゃう人が、ほとんどなんですけどね…」

「置く場所に困りそうだもんな〜」

「ははは…」

冬馬は、たたみ一畳分はありそうな大きさの手さげ袋を見ると笑った。