「はい、先輩。良かったらどうぞ〜」

腕を組んで作品に見入っていた椿に、後ろから声がかけられた。

「あ、どうも秋山さん…いいなぁ、ゆかた」

ふり向くとそこには、ゆかた姿の秋山実琴が立っていて、紙コップに入った麦茶を手渡された。

「やった〜ありがとうございます」

秋山は嬉しそうに笑うと、おぼんにのせた麦茶を他の人にも配って回った。

「どうよ?うちの子たちの作品は?」

麦茶を飲みながら見ていると、今度は顧問の榎本に声をかけられた。

「あ、先生。レベル高いと思いますよ、見ごたえあります」

「お、いい感想だな。顧問冥利に尽きるよ」

榎本は一人満足すると、鑑賞している父兄の方へと歩いて行った。




「…ありがとうございました」

鑑賞を終えた椿が受け付けに戻って来ると、冬馬が丁寧に頭を下げた。

「良かったよ」

「それは、どうも…」

椿が感想を話している間にも来場者は訪れ、美術室は見に来た人でにぎわった。