「よ、けっこ〜入ってるな」

椿は受け付けをしていた冬馬に声をかけた。

いつもは片開きの美術室の扉が、今日は観音開きになって来客を迎えている…

「いらっしゃい、椿君…何のかんの言っても美術部は文化祭の華ですから、わりと見に来てくれるんですよ」

入ってすぐに置かれた受け付けの向こうから、冬馬が笑顔で出迎えた。

学園内が一年で一番活気づく、今日は文化祭二日目の一般公開の日だ…

朝から天気も良く、他校の生徒や父兄も来校して、文化祭は大変なにぎわいを見せていた。

「見に来たよ、完成した作品はまだ見てないもんな」

そう言うと椿は、美術室を見渡した。

キレイな額縁に飾られた作品がパネルに展示され、鑑賞しやすいように配置されている…

「どうぞ、ごゆっくり…」

「ああ…」

椿はワクワクしながら、入口の方の作品から鑑賞し始めた。

「へぇ〜」

一点、一点、丁寧に鑑賞しながら、椿は感心する…

制作過程は見てたけど、完成した作品は別物だなぁ…と。