*   *   *




…ただただ驚愕する。




「言ったよね? 田中さんにバラしたら変な噂流すって」




目の前でそんなことを言い散らしている彼女はあの純真可憐な西垣さん…のはず。


ふわふわしてて笑顔が可愛いあの西垣さんのはず。



……ほんとにこれが西垣さんの素だなんて…。




「そうだね、流したいなら流せばいいよ」


「田中さんがいじめられてもいいんだ?」


「いじめられないよ、俺が守るから」




…なっ、


なんてクサい台詞を言ってのけるんだ三鷹くんは。



あの三鷹くんが私の為にあんな台詞を吐いているのが信じがたい。


…信じるも何も、今目の前で実際言ってたんだけど。



それを聞いた西垣さんはギンッと私を睨みつけてきた。




「意味わかんないっ…! なんで田中さんなんか守るの!?」




そう声を荒げる西垣さんはまた三鷹くんに視線を戻した。


三鷹くんは相変わらず涼しげな笑顔を絶やさない。

それが私にはひどく恐ろしい場面な気がして震えるよ。




「西垣さんみたいな性格ブスに教えるつもりはないよ。強いて言うなら田中さんの方がまだ性格ましだからかな」




…なぁんか気に障るよなぁ。




「ぶっ…ブス!? 比奈子今までブスなんて言われたことないのに…!」


「お望みならいくらでも言ってあげるよ」


「や、やめて! ブスはやめて!」




悔しそうに顔を歪める西垣さんを見下ろしながら、三鷹くんはニコッと笑っている。



…これどっちが悪者なの?