「あの、どうして今日、西垣くんが私に教科書を貸してくた時、みんなあんなに驚いていたんですか?」


確かに私も驚いたけれども、あの後長い間、みんながポカーンと口を開け固まっていたから。


それほど驚く理由が分からなくて、その理由が知りたかった。


「あいつ、無口だろ? 幼なじみの矢崎以外と話したり、なにかしてるところなんて、誰も見たことがなかったんだよ。もちろん俺もだ」


「え、そうなんですか!?」

だから、みんなあんなに驚いていたのか。


驚かない方が逆に変か……。

「ははっ。もしかしたら山中に気があるかもしれんな」


「それはないですよ」

「そうか? あ、山中。そろそろ帰らないとご家族が心配するぞ」


あ、いけない。

つい話しすぎちゃった。


先生に「さようなら」と言って見慣れない道を歩いた。