──ドン


前を向いていなかったせいで、誰かとぶつかってしまった。

体がビクっとなった。


「ごめ、大丈夫? ……あれ蓮菜?」


私の名前を呼ぶ、ぶつかった相手は……


「優くん?」

「そんな慌てて、なにかあったの? 怪我は大丈夫なの?」


「うん、もう大丈夫だよ。それより帰らなくて大丈夫なの?」

「大丈夫。それになにかあるなら聞きたいな。俺、蓮菜の彼氏でしょ?」


“彼氏でしょ?”

その言葉が、私を惑わせた。


「う、うん」

「あ、そうだ。今日いい場所見つけたんだ。行ってみようよ」


「え? 今から?」

「いいでしょ?」


私には、優くんの目が


“彼氏なんだから当たり前だろ?”

そう言っているように見えた。