「送ってくれて、ありがとう」
家の前に着き、柊くんに頭を下げてお礼を言った。
「おう! ……それより」
柊くんがさっきよりも低い声で言った。
「どうしたの?」
「蓮菜ちゃん、どうしてこの事言ってくれなかったんだよ」
「え?」
「言える訳ないってわかってるけど、誰にやられたの? その傷」
柊くんは顎をクイッとあげて、“それ”と示すように傷を見る。
だけど、もし言ってしまったら…。そう考えると、また傷を負うのはイヤだった。
「私、大丈夫だよ? だから……心配しないで」
軽く笑って言ったけれど、心は“助けて”と願うばかりだった。
それに諦めたのか、柊くんは
「そっか。ごめんね。じゃあまた明日」
くるりと向きを変え、来た道を戻っていく柊くんに“ごめんね”と謝りながら背中を見送った。