……目が覚めた。

気が付いたら、眠ってしまっていたらしい。

目を開けると、横に整った顔があった。

男の人の目を閉じた顔を、初めて見た。
まつ毛が長い。
鼻も高い。

紛うことなき、拓実くんだった。

弾力のありそうな唇に、見惚れてしまった。

少し、いたずらしちゃおうかなぁ。

自分の唇を近づけてみる。

……すると。

「あ、起きた?
理名ちゃん」

起きてしまった。

「あ、た、拓実くん?
お、おはよう……」

「おはよ、理名ちゃん。
昨日はごめんね。
あんまり、一緒にいられなくて」

「ううん。
ウチのお父さんに捕まって、いろいろ話してたんでしょ。
ごめんね、勘違いしてて……」

「ううん、気にしてないよ。
まぁ、理名ちゃんのお父さんに娘をよろしくって言われたのはちょっとビックリしたけど」

そんなこと、言われたんだ……

「ごめんね……」

会話が途切れた。

何か、何か話さないと……!

会話が途切れたタイミングで、コンコンと、ノックの音がした。

「理名ちゃん、起きたのね。
おはよう。

朝ごはん、持ってきたわよ。
しっかり食べなさいね」

「ありがとうございます」

「どう?
拓実くん。
臨床の勉強にはなったかしら」

「はい。
とっても。
無理を言って見学させて頂き、ありがとうございます」

「どういたしまして。
ゆっくりしていってね」

「理名ちゃん。
1つ、お願いしていいかな。
考えておいて。

治ったら、どこか行こうか。

理名ちゃんが行きたいところなら、どこでも連れて行くよ。
大事で大切な君を、守れなかったから、お詫びがしたいんだ」

これ、ひょっとしてひょっとすると、デートのお誘い?

「わかった。
考えておく……」

「俺はこれから、友達と出かけるから、明日また来る。

俺が来た時に、返事を聞かせて欲しいんだ。
いいかな?」

私が小さく頷くと、拓実くんは私の頭を撫でてから、病室を出ていった。

どうしよう……

場所、考えなきゃ!

私が行きたいところ、っていっても、よくわからない!

カフェとかが無難かな?
でも、映画とかも行きたいけど、王道すぎて引かれちゃうかなぁ?

カラオケとかは……いきなり個室だから、緊張しちゃうなぁ……

個室でラブハプニング、あるかもしれないし、ちょっと怖い。

こういうときは……親友に相談だ!

椎菜……は、除外だ。
きっと、麗眞くんと甘い時間を過ごしているんだろうから。

親友のうち2人に、メールを送ってみた。

返事、来るかな……