修学旅行という、一つの大きな行事も終わり、一段落していた頃。

何だか先生方も授業が中だるみ気味だ。

早く終わる日も多く、生徒たちも首を傾げている。

秋は中間テストがなく、期末テストだけだ。

期末テストは問題作成に思う存分力を入れられる、ということなのだろう。


そんな中、体育が30分だけ合法的にサボれる日がやってきた。

なぜか、皆に赤と青に光るサイリウムが配られた。

さながらどこかのアイドルのコンサートのようだ。

何に使うの?これ……

絶対的センターの琥珀は圧倒的な存在感で、くるくるとフォーメーションを変えながら、一糸乱れぬダンスを披露していく。

流石は、振り付けまでやる父の遺伝子を受け継いだ娘だ。

しかも、1曲踊りきってもなお、息すら切らせていない。

男性組は、麗眞くんがセンターだ。

さすがはアイドルの血を引く子、どこにいても華があるから、すぐに見つけられる。

ターンも軸がブレず、アクロバティックな動きもお手の物だった。

ほへぇ、という間抜けな声しか出なかった。
ダンスやら、音楽には疎いのだ。

男女組のダンスが終わった後、突如プロジェクターに職員室の様子が映った。

職員室にいる先生達も、私たちが持っているのと同じサイリウムを持っている。

『職員室にいる先生方にも、先程のダンス映像は拝見してもらっています。

女性陣のダンスが良かったと思う方は、赤に。

男性陣の、アクロバティックなダンスこそが良かったと思った方は、青に。

それぞれ、良かったと思う方にサイリウムの色を変えてください』

体育教師は、あくまで中立のため、今回は取りまとめる役に回ったようだ。

体育館で見ていた生徒達は僅かに男性陣の、青いサイリウムが目立った。

職員室の先生方は、赤いサイリウムを多く掲げていたため、僅差で女性陣の勝利となった。

授業の準備等もある先生方にも、協力いただいた。

そのお礼に、男女混合でこれまた息のあったダンスを披露した。

各々のプログラムに戻る、はずだった。

時間も中途半端だし、バレーと剣道の試合もできやしない、と誰かの発言が皮切りになった。

男女それぞれ、2グループに分かれてドッジボールをやることになった。

こんな自由で、いいの?

「まぁ、生徒の発案なら、いいんじゃないか。

俺たち教師じゃなくて、生徒が主体でいろいろ、自主的に面白くなるように動いてくれる。

この学園らしくて、俺は好きだがな。

俺なんて、男女別にして、皆にサイリウムで投票させるなんて、思いつかなかった。

エンターティナーの血筋を親から受け継いだ、帳と宝月の発案もある。

さらに盛り上げるべく、関口と小野寺が職員室の先生達に頭を下げにいったおかげもあるな」

そんなこと、してたんだ……

体育の授業、そしてその後の数学の授業後、帰りのHRの時を待たず、麗眞くんは帰っていた。

「目眩がする、って、ウチのミッチーの肩を借りながら昇降口向かったけど。

きっと疲れが出たのね、
いろいろあったし」

珍しいこともあるものだ。
風邪とは縁がなさそうなのに。