レストランに着くと、担任に案内された。
グループで着席するらしい。

ビュッフェ形式になっているようで、各々取りに行く。

美冬と麗眞くんは、目が合っても美冬はすぐに目線を逸らしてしまう。

どうやら相当ご立腹のようだ。

当の麗眞くん本人も、椎菜がいないと寂しいようだ。

どこか上の空でお皿に盛られた野菜や唐揚げを口に運んでいた。

その様子を、ヒソヒソと小声で話をしては、麗眞くんの方をチラチラと見ている生徒たち。

その生徒たちを麗眞くんがひと睨みすると、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「ホラホラ、そんな無口な男といても退屈でしょ?

こっちおいでよー!」

華恋や美冬に手招きされ、そちらに行くことにした。

気付けば、グループごとで着席という、決められたルールは形骸化していた。

担任がやれやれというように、頭を抱えていた。

私も、ご飯やパン、野菜やハンバーグなどを皿に盛る。

なかなかにいい味だ、と思いながら胃に流し込んだ。

麗眞くんのところの高級な食事には敵わないけれど。

何となく皆が食事を終えた頃だった。

食事を終えてすぐ席を立つのは身体に悪い、という隣のクラスの教師が口火をきった。

急遽30分くらいだが、場内にあるピアノでクラシックコンサートが行われることとなった。

そこに演者として登場したのは、誰あろう有海さんだった。

ガタ、と椅子を倒して立ち上がった琥珀。

目の前の光景が信じられないとばかりにしきりに瞬きをしていた。

「皆さん、いつも琥珀がお世話になっています。

せっかくドイツに来たんですもの、楽しんでいってくださいね」

にこやかに微笑んだ笑顔は、どことなく琥珀に似ていて、主に男子生徒が見惚れていた。

私はクラシックなどからっきしだ。

曲などは知らないが、『エリーゼのために』だけは知っていた。

1曲、また1曲と終わる度に、私も含めた皆が手がちぎれるんじゃないかと思うくらい、賛辞の拍手を送る。

ピアノの前に座るとスイッチが切り替わるのは、母娘で同じようだ。

有海さんに負けじと、空いた時間は琥珀がピアノの前に座った。

母親とは毛色の違う、今流行りのJ-POPだったり、アニメ映画のテーマソング。

それらを次々に弾いていく。

奏でる音色の毛色は違うが、やはり血の繋がった親子なのだということを認識させられた。

徐々にレストランから人が減っていく。

クラスごと、あるいはグループごとで空港に向かうバスへと乗り込むべく、移動しているのだ。

私たちもそろそろ行かないと。

いつまでも琥珀は有海さんと話している。

その横顔は、今にも泣き出しそうだった。

琥珀は巽くんにそっと腕を引っ張られて、レストランを出たところのベンチに連れて行かれていた。

「理名ちゃん、先にバスのとこ行ってな。

琥珀と優弥は俺が案内する」

いつの間に私の横にいたのか、麗眞くんにそう言われた。

彼がそう言うなら、私は先に行っていよう。

華恋や深月、美冬といろいろ雑談しながら共にバスに向かった。