「何で?何で八尋はあんな子がいいの?」


理解出来ないというように間抜け面を晒す。


「…少なくともあんたよりは何倍もいい」


そんな自分のことしか考えていないお姫様より、柚の方が比べ物にならないくらい。


「そうなんだ。確かに顔だけはいいよね〜」


自分は柚より性格がいいと言っているようでイライラが募る。


以前よりも今のお姫様の方が何故だか面倒だ。


柚に勝つ自信は凄くあるようで、何かと柚と比べたがる。


柚の悪いところを見つければ、ホラっと言ってあたしの方が…とブツブツ口に出す。


…気分が悪い。


「…これ以上柚のことをあんたは口に出さないで」


悪口を聞くほど気分が悪くなることはない。


「あ、ごめんね八尋。そうだよね、あんな女の話なんて興味無いよね」


焦ったように謝るお姫様。


あんな女?


柚が?


あんた自身じゃ無く?


「…本当あんたと居ると疲れる。…話とかいいから」


一刻も早くここから立ち去りたい。


椅子から立ち上がり、早足で柚の教室を出る時に無数の視線を感じるが無視。


「…ちょ、待ってよ!八尋、謝るから。あたしの何がいけなかったのか教えて?置いてかないでよ八尋っ」


後ろからちょこちょこと出てくる邪魔なお姫様。