〈滝川未玖side〉
八尋をあの子なんかに渡したくない。
その一心で動いてきた。
それは間違いだったの?
嫌われたくなくて、あたしだけを見て欲しくて。
邪魔な子を消したいなんて思うことは必然でしょ?
八尋がいいの、八尋しか愛せないの。
あたし以外見て欲しくない。
八尋がそんな顔であの子のことを見るから。
八尋があたしを触れてくれないその手であの子に触れるから。
八尋がそんな声であの子の名前を呼ぶから…。
苦しいの。
…苦しいよ。
好きだけじゃ言い表せなくて、愛してるでやっとの気持ち。
重いことは分かってる。
面倒くさい女だってことは分かってる。
八尋への気持ちが膨らむに連れ、あの子への憎悪も増していくのがわかるの。
だって、あの子が居なくなれば八尋はあたしを見てくれるかも知れないじゃない?
善と悪、あたしの中ですぐに悪の方が勝った。