「ごめんなさい、ごめ、んなさっ」
次第に泣きじゃくるように声をあげ、鼻水を啜る音まで聞こえてくる。
「お前っ相手には怪我は無かったんだろうな!」
いつまでも謝ってるだけの妹に堪忍袋の緒が切れたのか、兄も一緒になって声を荒あげる。
兄の方はまともなんだな。
いい兄貴を持ってるのに、なんでこんなにも歪んでしまったのか不思議だ。
「怪我はしてないみたい…運が良かったのね」
これだけ責められても柚が傷付けばよかったかのように言葉を発するお姫様に、やっぱりさっきの謝りは柚に対してのものじゃ無かったんだと憤りを感じる。
「何だよ、何でそんなことお前がするんよ!」
「しょうがないじゃない!…しょうが、ないじゃない。八尋が、八尋があたしの前からいなくなっちゃうんだもん」
徐々に力を失う声。
俺が居なくなる、か。
元からお姫様のことなんて見てなかったけど、お姫様の行動には俺も深く関わってたのか。
やっぱり俺のせい。
俺の近くにいるから柚は傷つく。
お姫様も俺が歪ませた。
壊させたんだ。
side END