「そ、そうですか……」

「うん。ごめんね」

「いえ、突然すみませんでした!!」



そう言いながら彼女は深々と頭を下げ、私に背を向けた。



「ねぇ」



ドアの方へ数歩進んだ所で、私は彼女を呼び止めた。

半ば無意識で出た言葉で私自身少しびっくりしたが、私は先を続けた。



「想いは、直接伝えるべきだと私は思うよ」

「で、でも……」



振り向いた女子生徒は、拳を強く握り締めている。



「文字では伝えられない想いもあるの。だから、“直接伝える”という手も少しは考えてみてね」



今私が彼女に出来るアドバイスは、これくらいだ。

多分、“本当に伝えたかった意味”は分かっていないだろうけれど。



「ありがとうございました!!」ともう一度頭を下げて、彼女は小走りで屋上を出て行った。


再び一人になった屋上を、そっと風が吹き抜けた。