冷たく見下すような視線が、私を貫く。

体を、頭を、心を、“私”を。


私は、特に何か表情を浮かべることなく視線を逸らした。


縮まる距離が、頭から記憶を引き出していく。

収まりかけていた苛立ちが、再び湧き上がってくる。

誰に対しての苛立ちだろうか。


彼に対してだろうか、それとも私自身に対してだろうか。


目線を逸らしていても感じる、彼の冷たい視線。

突き刺さるそれは、まるで刃のよう。


彼と擦れ違う五分にも満たない時間が、なんだか一時間のように思えた。

スローモーションのように過ぎ行く。


無表情のまま、私は彼の隣を通り過ぎた。

何も言わずに通り過ぎた私に、彼はこう言った。





「酷い女のシュートは最悪だな」





ただでさえ苛立っていたのに、その一言でボルテージが上がる。

振り向き、何か言ってやろうと思ったが、無理矢理出そうになった言葉を飲み込み、私は体育館を後にした。