――ガンッ。
放ったボールはネットを潜ることなく、赤いリングの縁にぶつかって落下した。
これで何本目だろう。
微妙な調整さえ、今の私には出来ないのだろうか。
「……クソッ」
思わず口から零れ落ちた言葉には、苛立たしさが溢れるほど込められていた。
それでも私は、ボール入れからまたボールを取り出し、フォームを構える。
膝を曲げ、足の力を遣って両手からボールを放つ。
けれどもまた、ボールは白いネットを潜ることはなかった。
その時、もうこれ以上やっても、何度やっても同じだと思った。
床に散らばるボールを掻き集めてなおし、パイプ椅子の上に置いておいた鞄を肩から提げてドアへと向かう。
ふと、ドアの隅に制服を身に纏った男の姿が見えた。
長身とはいえないが、男子の平均身長はあるであろう彼は、腕を組んでこちらを見ている。
少しツンツンした髪の毛、左腕につけられている黒いブレスレット。
次第に距離が縮まり、漸く彼の顔がはっきりと見える距離まで来た時、
私は、思わず息を呑んだ。