スーツの人が行ってしまうと、いつものような静けさがまた戻ってきた。
さっきはやけにキラキラして見えたけど、いつもと同じ休憩室だ。
あの人がかっこ良かったから?
私もまだまだそんな反応残ってたんだー。
ちょっと自分にビックリしながら、ゆっくりコーヒーを飲んで、温泉を後にした。
車を街のほうに走らせて、駅の駐車場に車を停めた。
最初の30分無料で、提携のお店で2000円以上買うと2時間無料になる。
今日は買う物はだいたい決まってるんだ。
明日からの2連休を、学生時代の友達のリコと過ごす。
リコは看護学校の実習先の病院に就職した。
私と同じ県外組だったけど、リコはそのまま地元に帰らず、就職を決めた。
リコは、実家にお兄さんがいて、結婚して2世帯住宅に建て直して、リコの部屋はないんだ、って言っていた。
帰ったら客間に寝るんだよ。アパートのほうが落ち着く~って、年末年始に数日帰るくらいでほとんど帰らなかった。
今回は、久しぶりに会おうって連絡がきたけど、なんとなく、学生の頃から付き合ってる彼と結婚の報告じゃないかなって思ってる。
アパートに泊めてもらうから、ちょっとお土産を買って行こう、ついでにコートとか、冬の服が出てないか、好きなお店を見て回る予定。
お土産は、リコの彼も好きって言ってた漬物は外せないから、最後に買うとして、まずは化粧品から見に行く。

1階の入り口から、バッグのコーナーを抜けて化粧品の売り場に行く。
色々見ていくけど、やっぱり気になるところはいつも買うお店。ちょっと入っていくと店員さんが話しかけてくる。
夜勤の後はいつも肌が乾燥するから、それを伝えると、
お姉さんが肌に何か器械を当てて、ピピッと音がして肌年齢を調べてくれたけど、結果は意外にも良かったらしい。温泉入ってきたからかな。
結局今のお手入れの他に外出先でミスト化粧水を使っては?と勧められて、購入。
そのままそこでお姉さんにお化粧してもらう。夜勤明けってこともあるけど、目元のクマが気になるので、とコンシーラーで上手に隠してくれた。目元のケアはやったほういいからと、アイクリームも購入。
つい買ってしまう…
もう駐車場料金分は使った。
ついでだからとインフォメーションで駐車券の手続きを済ませて、2階へ上がる。
エレベーター前から順にショップを見ていく。
好きなお店はあるけど、色々見て回るのは楽しい。
ファーのついた暖かそうなコートが欲しいなあ~。
去年までのはパンツスタイルに合うかんじだけど、今年はスカートが増えたから、Aラインのコート出てないかな~。
すぐに入ったショップで、いいなと思うコートがあったけど、ファー付きのダウンコートで、ちょっと重いのが気になる。まだ他も見てみよ。
ショップに入る度に店員さんが「何かお探しですか~」とか、「それ今日入荷したばかりなんですよ~」って話しかけてくれて、ついついそのまま話し聞いちゃいそうになるけど、今日は残り2時間で全館見たいの~。
ありがとうございま~す、他も見てみま~す、と次々物色。
欲しい物いっぱいある~~。
お給料は車のローンが引き落としで、生命保険に月1万ペースを別の通帳に貯めて、他に実家にお金を入れて、定期貯金を引いて、残り8万。
たまには友達と旅行も行きたいし、定期以外にも貯金はしたいけど、ほぼ毎月使ってしまう…。
合コンに行くようなこともないし、彼氏もいない。彼氏がいた時は私の親が光熱費出してくれて(半同棲は伝えてないけど…)、彼が食費を出してくれてた。
自分で働くようになって、自分のお金で買い物するようになったら、どんどん使っちゃうから、あわてて定期貯金を始めた。
今では定期貯金は結構貯まってはいる。
しっかりしてそうに見えるとよく言われるけど、結構後先考えずに買ってしまうこともある。
仕事で躓いた時や凹んだ時は、コンビニスイーツ買って食べて気持ち切り替えたり、頑張ったなって時にはブランド物を買って自分にご褒美って散財しちゃう。
彼氏が出来て、将来考えるようになったら普段から節約するようになるのかなあ…。そんな自分がイメージ浮かばない。
佐藤先輩と勤務や係が一緒になることが減って、体調のこと考えたらあんまり食事にも誘えなくて、心配させてもいけないから、愚痴ったり不安そうにしないようにしてる。
ちょっとご褒美率が上がりそうな予感。

コート探しつつ、服も目に入ってくるーー。
欲しくなるーー。
でもダメダメ。明日出掛けるお金残さなきゃ。
コートも、ブラックが欲しいけど、去年買ったベージュのロングコートによく似たコートで袖口にファーがついてるのに惹かれて惹かれて…、同じようなの持ってるからダメ!って思うんだけどー。
去年のコートにファーだけつけ直す??イヤイヤ、そんな芸当出来るわけない、なんて考えながら、見ていくと、ブラックでファーのボリュームもあるAラインコート発見!!
上品な雰囲気で長さもイメージ通り~~!
ってフワフワ~とした足取りでショップに入った。
よく買い物するショップで、高校の時の後輩のマリちゃんが働いている。
後輩って言っても、高校生のときはこっちが一方的に知ってたってだけ。
私が3年生のとき、1年生でNo.1にカワイイと言われていた野球部のマネージャーが彼女。
私が地元に戻ってきて、ここに買い物に来て、店員と客として話ながら、さりげなく(?)同じ高校だったんだよ~って話してから、さらによく話すようになった。
今もやっぱりすごくカワイイ。
「こんにちは~、やっぱこのコート気になっちゃいました??こないだ買ってくれたワンピースにも丈とかちょうど良くないですー??」
って、マリちゃんが話ながら来てくれた。
ちょうど他にお客様もいないから、「こんにちは~!イイナーって思って引力に引き寄せられちゃったよ~!」って、ちょっと興奮気味に話しちゃった。
「ですよね~!多分、ブラックはすぐ売れちゃう気がするんですよ~。ホワイトとベージュとグレーがあるんですけど~。」
って他の色も見せてくれたけど、うん、最初からブラック探してたってのもあるけど、持ってる服とかブーツとかと一番合わせやすそうだなー。
「長く使えそうですよねー。」
うんうん、と頷きながら、ちょっと羽織ってみていい?って聞くと、ドーゾドーゾと試着室に案内してくれる。
ブーツも私が持ってるのと似た長さのを持ってきてくれて、これで合わせてみてくださーい、と。
出来る子だわ~、と思いながら、試着して、「マリちゃ~ん」と言いながらカーテンを開けると、ちょうど入ってきたお客様に声かけられてるマリちゃん。
誰もいないつもりで話しかけちゃったからちょっと恥ずかしい~、って思ってたら、奥の扉から服を数点持ってきた男性スタッフさんが出てきた。
ヒャッ、こっちからも人が!どうしよう、マリちゃんの感想聞きたいけど…、って思ってると、マリちゃんが「在庫確認します」って言いながら、「店長、お願いできますか?」って言いながらこっちに来てくれた。