―胡桃saidー

凜ちゃんは、思いつめた感じで走っていっちゃった。
私の思うつぼ。

でも、龍樹が後を追おうとした。
『まってよ龍樹!!』
私は龍樹の袖を強く握った。


『胡桃....』
龍樹は私に向き直った。


『俺はあいつのもんだ。もう、お前のこと二度と抱く気ねぇから』
龍樹はあたしをまっすぐ見つめてそう言った。


私は無意識に袖を掴んでいた力を緩めた。
すると龍樹は一目散に走っていった。




私の方が、ずっと前から龍樹のこと好きだっのに。


小学5年生の時に両親が離婚して。
お母さんがあんなんになっちゃって。
だから中学生の龍樹はボロボロだった。

私のうちも親が離婚してたから、
気持ちはよくわかった。

私はどんな龍樹も見てきた。
凜ちゃんなんかよりずっと、
龍樹のこと理解してあげられるのに。

それなのに....


龍樹はあの子を選んだ。
ねぇ、なんで?


『龍樹はもうあの頃とは違うよ』
振り返ると伶雄がいた。

『嫌味のつもり?』
『違う。ただ、二人の邪魔すんなよ』
伶雄は珍しく低い声を出した。



『もぅ、邪魔なんて意味ないじゃない』
私は二人が走っていった方を見つめた。


龍樹はきっと何をしたって、
あたしを見てくれることはない。

今回の事でハッキリした。


『ま、胡桃は可愛いから、心配ないよ』
伶雄はニコニコしながら言った。
『なんのフォローよ』
私も思わず微笑んだ。

『伶雄合コン行く気ある?』
『いくいく♪』



私は涙は流れる涙を拭った。