―凜said―

世の中は、至極不公平だとあたしは思う。
どうやったら、こんな美人が生まれるんだ。
龍樹のお母さんは、
ものすごく美人だったから、
たぶんそのせいだと思う。

...でも、ひどくない!?
絶対、写真の時隣に並びたくないタイプの...

『きゃー美人!!龍樹いつのまにこんな美人...』
騒ぐお姉さんの口を塞ぐ龍樹。

『ちげぇから。てか、こいつに服貸してやってよ。』
ぁあ、こういうのを、
仲のいい兄弟って言うんだろうな。
一人っ子のあたしは、
なんだかすごく羨ましかった。

龍樹のお姉さんにスウェットを借りて、
再びリビングの綺麗な、
高級そうなソファーに腰をかける。


龍樹は、冷蔵庫から缶ビールを取り出してのん...ん?
缶ビール!?飲酒!?
や、たまにたばこ吸ってんのは見たことありますけど、なんであんな普通に...

『龍樹ぃ、あたしのワインもとってくんない!?あと!!ほら、この子にもなんか!!』
ワ、ワイン!?
なんなんだこの家...

『ところで、』
龍樹のお姉さんがあたしの方に向き直った。
『あたしは、八神 京香!見てのとおり龍樹の姉』
京香さんはワインのコルクを開けて、
グラスに注ぎながらそう言った。

『あたしは、龍樹...くんとおなじクラスの更級 凜です!』

『え、彼女じゃないの?』
は、はい...

『龍樹がラブホには行くせに、うちには女の子連れてきた事なかったから、本命かと思ったんだけどなぁ...』

うちに連れてきたことなかったんだ...
まぁ、京香さんもいるなら
あんまりたくさんの人出入りさせられないよねぇ...

『うっせーよ』
龍樹は、ちょっと不機嫌。

『で、うちに連れてきたのはいいんだけど、泊めんの?』

え...あっ!!そうだ!!
勢いできちゃったけど、
この後どうするんだろ...
親に連絡しなきゃだしっ...

『泊まってけよ。送るのめんどい』

...はぁァ!?
『龍樹最低』
龍樹にそっくりな顔で、京香さんは龍樹を睨んだ。

『別にあんたに送ってもらわなくても一人で帰れるし...』

『はぁぁぁ...』
龍樹は盛大なため息をお見舞いした。

『さっきあんな目にあったばっかなのに、こりてねぇ訳?この辺のこの時間はもっとやばいのうろついてんだぞ』

...なんだとぅ!?
う...じゃ、マジで泊まるのかよ...

『あ、今日あたし彼氏んとこ行くから、ゆっくりしてってね!』
さすが美人。
彼氏がいてもおかしくないよね...

『晴先輩に迷惑かけんなよ?』
『ばぁか。晴はあたしにぞっこんだから!』

あたしはお母さんに、
未遥のうちに泊まるとメールをした。

『お前、先シャワー浴びてこい』
そう言われて、バスタオルを投げられた。
『姉貴が新品の下着用意してあるって』

あたしは八神家のシャワーをお借りすることになった。

ひ、広い!!
浴槽がでけぇ!!何だこれ!!
流石高級マンションだ...


...って。
京香さんの下着は、黒と濃いピンクのひらひらした、小悪魔系ど派手下着だった。


...こんなん着れねぇ!!
着たことねぇ!!着る予定もねぇ!!



シャワーを終えて、リビングに戻るといい匂いがした。
キッチンのほうを見ると、
私服に着替えた龍樹が...

料理だとぅ!?
なんだこいつ...まじでなんなんだ!!

『お前好き嫌いねーよな』
目の前に運ばれたのは、
なんともオシャレなパスタだった。


まじかよ...
なんでこんなhigh-levelなんだぃ!?

『龍樹ってさ、出来ない事なくて、たまに恐怖を感じるよね。』
『あ?』
『いただきまぁーす!!』

もぐもぐ...
う、うまい!!
あたしは思わず龍樹の顔を見た。
『わかったわかった...くっ』
必死に笑いをこらえる龍樹を見て、
しまったと後悔した。


『本当美味しかったぁ!!ごちそうさま♪』
かなり上機嫌のあたしは、
無理やり洗い物をやらせてもらった。


龍樹は、今度はチューハイを片手に
テレビをみはじめた。
あたしもその隣でテレビをみた。

なんだか、やけにドキドキする...
大して面白いテレビじゃないけど、
なんかそういうの関係なしで...
龍樹の隣にいると、ドキドキするけど
すごく安心出来る。

テレビを1時間くらいみてた。
その時は、あたしは既に限界だった。
体力てきな部分も、精神的な部分も
相当参っちゃってたみたいで、
気づいたら意識はなかった。

『あー、ったく。本当世話のやけるやつ。』