―凜said―

初めて聞いた、龍樹のお母さんの話。
離婚して、風俗に入って。
そして、亡くなったお母さんの話。

ひとつ思ったのは、
そんなお母さんでも、
龍樹は大好きだったんだなって思った。

龍樹が、初めて泣いた。
静かに、声を押し殺していたけど、
かすかに震えてた。
鼻水すすって、
『風邪ひいた』
って言ったときは、思わずちょっと笑っちゃった。


あたしみたいな、平穏な家庭には想像もできないような毎日だったんだろう。
龍樹はまだ中学生だったのに。


『お前が、母さんみたいなやつじゃなくて良かった。』
未遥の言う通りだね。




『お前がそういうやつじゃなくて、心底安心した。』
珍しい龍樹の弱々しい声。





『ごめんね、龍樹』
あたしは、精一杯の気持ちで謝った。

『ばぁか』
そう言って顔をあげた龍樹は、
すこし目尻が腫れていたけど、
いつもの龍樹で安心した。






ガチャっ
という玄関が開く音にびっくりしたあたしと龍樹。






『姉貴が帰ってきた』
でもそれ以上に、
『龍樹!?彼女か!?』
って言って入ってきた女の人が、
すごく美人で。
ものすごく夏樹にそっくりで。



あたしはびっくりした。