―凜said―

図書室の隣の理科室に置いてあるみんなのノート取ってきて...

って、担任にパシられたのは仕様がないと思ってた。

でも...
眼前に広がるこの光景は...なんですか?

少しはだけたイケメンと
その奥の、もっとはだけた美人さん。

『最悪だ』って顔して、
クソ龍樹は立っていた。

おそらくあれだ。
行為...をしていたんだろ!?
彼女でもない人と...それが龍樹。

『お邪魔しました!!』
あたしはなぜだか無性に泣きたくなって、
大声を張り上げて、
図書室から走って逃げた。逃げることしかできなかった。

何がそんなに悔しいんだろ。
龍樹がそういう奴だって事ははじめからわかっていたのに。
特別を作らない人だって。
あたしだって、どうせ気まぐれでちょっかい出して、ヤリ捨てするつもりだったって...そんなのわかってたのに。


知らない間に涙が止まらなくなってた。


『わ!?!?』
我武者羅に校内を走り回っていたあたしは、前から来る人に気がつかなくて、
おもいっきり体当たりしてしまった。

『あの、すいませんっ』
『大丈夫、俺だから』
顔を上げると、
夕日に反射して輝くシルバーのピアスが
すごく綺麗な怜雄がいた。

『わぁー、ごめん怜雄っ』
あたしは急いで目をこすったけど、
遅かった。

『龍樹の事で泣いてるの?』
図星で何も言えないあたしに、
怜雄は言葉を続けた。

『なんかさぁ、龍樹、凜ちゃんに出会って少し変わったんだよね。女遊びしなくなったってゆーか。たぶん、女といるよりみんなといる時間の楽しさをしったんだね』
怜雄はいつもの笑顔で笑った。

『俺と龍樹さぁ、小学校の頃から親友なんだ。だから、あいつの考えてることすぐわかっちゃうの』
そう話す怜雄はとても楽しそうに見えた。

『あいつも色々あったんだ。でも、凜ちゃんのおかげでまた笑うようになった。』
色々あって?
また...?
前は、今以上に笑っていなかったのかな?

『俺はもうそれだけで十分!ありがとうね、凜ちゃん』
怜雄はまた笑った。
あたし、なんもしてないと思うんだけどなぁ...。

『凜ちゃんも素直にならなきゃ後悔するよ?』
っていう、最後の言葉の意味はよくわからなかったんだけど...



自分でも気づかないうちにあたしは、
龍樹を通して夏樹をみることはなくなっていて、


ちゃんと龍樹自身をみていた。