―凜said―

ん...っう、
顔のあちこちが痛い...

白い天井に、消毒のにおい...ってことは保健室かぁ。

...はぁ。にしてもだれだよ...
人の顔にボールぶつける下手くそh...



横を向いたあたしは硬直した。

だってそこには
椅子に座ってすやすや眠る、
アホ龍樹がいたから。


え...何故!?
まて、なんでここにいるんだ...
まさか、ずっとここに?
...なわけないか。龍樹に限って。
でも、変なところ優しいからなぁ...

あたしはもう一度、龍樹の顔を見た。


黙っていれば、本当に夏樹にそっくりだ。

赤みがかった、明るい茶髪が、
窓から差し込む陽の光にあたってキラキラしてる。
空いている窓から、風にのって臭うのは、
きっとなにかの香水で。

やばい、かっこいい...

って、それ、龍樹に対して思ってるのかな。
未遥の言うとおり。

あたしは、龍樹を通して夏樹を見ているんじゃないかって思うことがある。

似ているのは、顔だけなのに。
後は全て正反対。

それでも...



思わず目を背けようとした瞬間、
龍樹が目を開いた。

『なに、俺の顔になんかついてんのか?』

しまった...
急に恥ずかしくなって、
『うん、アホって書いてある』
その直後に、頭をぐりぐりされて
こんなこと言うんじゃなかったって、
あたしが後悔したのは、言うまでもない。

『てか、なんで龍樹ここにいんの?』
一番重要なことを忘れかけてたあたしは、
龍樹に素朴な質問をしてみた。

『俺がお前の顔面にボールぶつけたからに決まってんだろ、馬鹿か?』
ニヤニヤしてやがる。

『...お前か!?人の顔とゴール間違える下手くそなキチガイは!!』
どんだけ痛かったと思ってんだ!!
あたしは龍樹の肩を殴った。

『いってぇな、暴れんなよ。普通よけられんだろ、ふ、つ、う、』

...こいつ!!人のこと馬鹿にしやがった!!

『本当に痛かったんだからね!?』
初めて気を失ったんだぞ...

『ぷ、くはははっっ』
『はぁ!?』
なんでこいつ吹いてんだよ...
『やっぱお前、超おもしれぇ』

また...その顔で笑った。
これだけは、マジで勘弁...
龍樹でも、こんな風に笑うんだ。
って言ったら、怒られそう。


夏樹と同じ笑顔。


思わず下を向くと、
『褒めてねぇぞ?』
ってまた笑い始めた。


こいつのツボは、
相当イカレちゃってるんだと思った。

うん、絶対そうだ!!