『よ』


「よって…、どうしたの?」


驚いている様子の海梨は、少し息が乱れていて

『ごめん、大丈夫か?』


申し訳ない気分になった。


だけど海梨はそんな事お構いないなようで

「何かあったの?」


俺がここにいるのを心底不思議がってるみたいだ。



『や、特になにも‥』


「…なにそれ」


そう言って気が抜けたように柔らかく笑う海梨を見て、俺の方がきっともっと気が抜けてる。


それから、部屋が散らかってるから駄目と言った海梨のマンションを後に、俺達は近くのカフェに入った。

「最近暑いからさ、部屋の中までぐーたら」


『湊もすでにバテてたしな』


「あはは、美月もだよ」



他愛もない話をして、しょうもない事で笑う海梨に酷く安心していた。


俺が今日ここに来た理由を忘れてしまうくらいに、前の明るい海梨だったから。