「なに…、あたしの事好きなの‥?」


潤んだ瞳で
少し赤くなった頬で
はぶてたように尖んがった唇で

『……』


俺を見るもんだから。



「‥なに笑ってんの」


『や、笑ってね…』


「も、バカ慶士!離してよっ」



さっきまでの弱っちい海梨はどこへ行ったのか。


普段の、いや、普段よりも強気だ。


「はーなーせぇーっ!」


『い、や』



離してなんか無理なお願い。

この腕、弱まらないもんなぁ。



『好きじゃなきゃ…、』


俺が言葉を発すると、ジタバタと暴れていた海梨からフッと力が抜けた。


『好きじゃなきゃ、七年も一緒にいねぇだろ』


「……」


『好きじゃなきゃ、今日だって会いにきたりしないっつの』


「……」



すっかり黙りこんだ海梨からは、静かに呼吸する音が聞こえる。