仕事現場に着くと同僚の藤村 真一が来ていた。

「お~佐々木さん、ようやく来ましたね」

真一は随分と早く来ていたみたいで待ちくたびれた表情をしていた。

「なんだ?…真一、まだ集合時間じゃないだろうが早いな」

魁斗は首を傾げ不思議そうに真一に視線を向けた

「佐々木さん、僕は幽霊や幻覚や幻聴を見たり聞いたりしたことが、ありますか?」

真一は魁斗の一旦視線を向けては逸らし
伏し目がちに魁斗に訊いてきた。

「なんだよ…やぶから棒に、わけのわからこつば言うて…俺は幽霊や幻聴なんか見たことも聞いたこともねぇよ」

魁斗は今朝起きたスーツの男の出来事も重なり、いきなり変なことを言い出す真一に言葉を荒げた。

「実は僕、携帯電話の機種を変えたんですが、それから変な夢ばかり見るのですよ。それも、かなりリアルな夢なんですけどね」

真一は視線をゆっくり魁斗に向けて真剣な表情でジッと見つめた。

「なんだそれ…真一、何処かで頭をぶつけたんじゃなかとや?」

魁斗は真一のいうことに、あきれて笑いが込みあげてきた。

「佐々木さん…信じてないでしょう?」

真一は、真剣な表情で魁斗を見つめ言葉を荒げた。

「ああーハッキリ言って信じてなかね…真一、お前が、バチが当たることをしたんなら信じて、やってもよかぞ」

魁斗は笑いを堪えながら真一に答えた。

「そんなこと、するわけ無いじゃないですか」

真一は、気に障ったのか本気で怒り出した。

「わかった…わかった…真一、実は俺も機種を変えようと思ってな…お前、昔からスマホ使ってるだろう?」

魁斗は真一の幽霊話は興味が無く、真一をなだめながら話題を変えた。

「佐々木さん…確か昔からガラケーでしたねスマホなんか、使えるのですか?」

真一は小馬鹿にしたように、笑顔で魁斗に訊いてきた。

「うるせー、俺だってなハイカラに背伸びしたくなるんだよ」

魁斗は痛いとこ突かれ、真一の視線を逸らし答えた。
「あっ、それなら僕が機種変更した店を教えますよ。ここから近いですからどうぞ」

真一は、メモ用紙に住所を書き魁斗に手渡した。

「おっ、すまんな。仕事が終わってから寄ってみるよ」

魁斗は真一からメモを受け取りズボンのポケットに入れた。

「あっ、道がわからないなら携帯電話で、検索が出来ますよ。わかりますよね?」

真一は、笑いながら魁斗に訊いてきた。

「お前、馬鹿にしてるだろう?それくらい俺にも出来る!そろそろ仕事を始めぞ!」

魁斗は声を荒げながら…仕事現場に向かった。