唇は離れた。お互いの体温は上昇していた。長谷部さんは立って、「星山君、今日のことは忘れよう。そして、誰にも言わないようにしよう」と言った。




俺はうんと頷いた。







物理準備室を出ると、もう夕日は廊下に差し込み終わろうかとしていた。
何も言わず二人は歩いた。日が暮れても。






俺は何も言わず部活を休み、長谷部さんを駅まで送った。
今日されたことは、ひょっとしたら重大な出来事なのかもしれないが、何故かすんなり受け入れることが出来た。




帰り際、俺は長谷部さんが好きだったことを聞かされた。
だが、返答は求められなかった。



長谷部さんの髪は風にさらわれ、横顔が可愛い。今さっきキスをした人物とはとても思えなかった。