落ち着いた長谷部さんは涙を拭いた。俺はホッとした。初夏の日、密室に含まれた俺達の額には汗が滲んでいた。



「もう、いいや。あたしは新しいもんを見つければいいから。だから、最後に」





「なに?」





「すわって」





俺は座った。長谷部さんと向かい合った。






「最後に…」





長谷部さんは身を乗り出し、俺にまたキスした。






四秒くらいの世界が停まった瞬間だった。