物理準備室は黒いカーテンに覆われて薄暗かった。三畳くらいのただでさえ狭い場所であるのに、長谷部さんは強引に俺を数センチしか離れてないところまで寄せた。






さっき走ったせいか、長谷部さんからの息でさえ感じられた。





「ねぇ…どうしたの長谷部さん?」
俺はかなり動揺していたが、なんとなく今後の予想がつきそうだった。







「あ…あたしの名前わかるんだ…ありがと星山君」

息を整えつつ長谷部さんは言った。




すこし間を置いて、長谷部さんは話し出した。声は何故だか泣きそうだった。





「あのね星山君…あたし今度肘の手術しないといけないの……せっかくバレーのために耐えてきたのに…」


「もう…バレーできなくなる…」





俺はなんと声をかければよいのか全くわからなかった。正直、話した時間なんて一分もないだろう。なのに、なぜ、こんなことをいわれてどうしようもなく、ただ、じっと長谷部さんの目を見ることしか出来なかった。

そして、長谷部さんは言った。












「キスして」