小川さんは川島さんと何か話をしている。晴天の中。まるで絵の具を溶いた水の中にいるような気がして。




もう、他愛もない話をしている小川を見ているだけで、水の中で溺れてしまいそうな苦しみと、可憐さが感じられて俺はもうそれだけで幸せだった。




川島さんに話を振られた。
「星山君て普段何してるの?」



「うー…音楽聴いてるかな」




「じゃあ何聞いてるの?」





「………銀杏BOYZとかかなぁ」





川島は分からなそうな顔をしていた。まあそうだろう、なんか違うのにしとけばよかったなと感じたが、小川は言った。






「ベビベビ〜♪ベビベビ〜♪だよね?」






誇らしげな顔した小川が唄った銀杏BOYZのBABYBABY。俺はあのメロディを忘れない。小川の口から流れたあのメロディを忘れない、と心に誓った。




「そうそう!!」と驚きながら俺は言った。





「うちも少ししか知らないんだけどね。」と照れながらいった。






学校の坂まであとちょっと。この時間は過ぎてほしくはない。