遠くで俺に向かって手を振っていたのは小川友紀だった。
俺は何故小川が俺に向かって手を振っているのか、何故俺の帰り道であるところに小川はいるのだろうかを理解する前に、小川を見ることができた喜びと、はやる気持ちで頭が真っ白になった。



「久しぶりだよね。星山くん」

少し笑って彼女は俺を見て言った。
俺は俺の名前が呼ばれることによって気が遠くなるような可笑しげな感覚になった。


「そうだねー久々だね。」



「あ、前のことはほんとにごめんねー。私あそこでバイトしてるから、どうしても…ね。」
彼女は言った。


「いや別に全然気にしてないから!ぜんーぜん平気さ」

「あぁー良かった。あれから話せてないから怒ってるのかと思った。」
彼女はまた笑った。


このまま俺は事故で複雑骨折したとしても、痛みは感じないままでいられるであろう、そんな平和な時間が流れた。