刻々と昼休みの時間が近づいていた。これで話さないとチャンスはない。ピンチはチャンスと言うが、チャンスはチャンスなのだろうか。



四時間目の古典はもちろん俺の体を擦り抜けていくばかりだ。何しよ。どう話そ。何話そ。と考えた瞬間、昨日の夜、小川に手を引っ張られたときの感触が蘇ってきた。あの時、微かに分かった小川の髪の毛の香りでさえ鮮明に蘇ってきて、俺の体はやってられない状況にあった。
授業中に立ち上がりそうになった。



チャイムが鳴ったとき、その感触は空中で分裂して消えていくかのようにドキッとした。来る。来る。小川が来る。










来ない。