やっぱり朝は来るわけで、誰にでも生活はあるわけで、俺は知らず知らずのうちに時は流れ、いつものように部活へ行く。
今日分かったことだが、小川さんは昼休みになると複数のグループで四組に来ている。まるで自分のために来ていると思ってしまった自分を打ち殺したくなった。


望月とキャッチボールをしている。望月は二組だから俺以上に小川さんを観ているだろう。

「望月、小川さんって知ってる?」と俺は問う。


「え?誰?実在する人?」とぶん殴りたくなるような笑顔で返してきた。


五月。日差しは徐々に夏っぼくなる中、練習もキツくなってきた。


いつも帰るときは、同じ方向へ帰る坂本と中村という奴と帰る。中村はモノマネが得意で、「海に落とされる石倉三郎」というネタが十八番である。



正直、部活のレギュラーは俺か中村がギリギリだ。巧くないし下手でもない。だからそんなにそういう野球の話はしない。


「ななんかよー、三人とも彼女いないとかどうよ?あーなんかモテててーてなー」と坂本は言う。


「じゃ坂本誰かと付き合えやー。」と中村が言う。この流れは定期的に来る。夕日には決して合わない惨めな姿である。



「じゃあな。」
駅前で坂本と中村と別れる。俺はこのまま帰りたくなくて、暗くなりそうな町のなかに飛び込んだ。