帰り道。俺はいつもこの夕焼けによって赤く染まった空気のなか、壊れかけたMDプレーヤーで、音楽を流しながら自転車をこいでいる。だが、今日は特別音楽が耳に入らなかった。

目の前に現われた「あの女子」は一体誰なんだろうか。そして考えるごとになーんだか自分のなかが混ざっていくような不思議な感覚で、だけどその感情を何と呼んだら良いのかわからない。だからもどかしい。

「はぁ。」とため息をつく。「だけど、そんな人のこと考えて何になるんだ。」と考えすぎて一周してどうでもよくなるループになってしまった。
もしかしたら、俺はあの人が、好きだ。



何にも言わない
ウチには帰らない
彼女と歩いてた
日が暮れても彼女と歩いてた



Theピーズの「日が暮れても彼女と歩いてた」を耳に流し込みながら、俺は自転車の負荷を変えて、夕焼けの空気の中をすりぬける。
明日早く学校行きたい。