「麗はね、色んなこと抱えてるから」



私を裏切り者扱いしたことも、実際抱えてた。



たった、ひとりで。



「誰か一人でもそれに気付いてあげれば、私じゃなくても優しい顔してくれるようになると思うよ」



そう言ったとき。



ふわりと、後ろから抱きしめられた。



「汐乃」



私をこう呼ぶのは、彼ひとり。




「沙和との話、終わったの?麗」



「ああ」



「私に何か用?」



「いや、特にない」



「……そっか」



ゆるく彼の腕を解いて、体を反転させる。



麗を見上げれば。



「暇か?」