あたしは信じられない思いで、その女の子の後ろ姿をじっと見ていた。
「成美ー、もう章吾くんと別れたらー? キスしかできない男ってキモイしー」
「だよねー? あーあぁ、無駄な夏休みだったわ。こんなことなら、元カレと別れなきゃよかった!」
「あぁー、Hがマンネリすぎて別れたんだっけ? ヨリ戻すの?」
「このまま章吾くんと付き合い続けてHできないよりはマシだよー」
ギャハハ、と、面白おかしく笑っているけれど……。
なにがそんなに面白いの?
成美ちゃん、笠原くんのことを本当に好きで付き合っていたんじゃないの?
――バン……ッ!
わざと大きな音を立てて、トイレの入り口のドアを閉める。
成美ちゃんを中心にした女の子たちが、ビクッと身体を震わせてこちらを一斉に見た。