小学生の頃からそうだった。
声や態度を正確に使い分ける笠原くん。
高校生になっても、あたしが他の人と付き合い始めても、それは揺らぐことがないんだ。
気持ちを切り替えよう。
笠原くんを追いかけ続けていた昔のあたしは、こんなに悲観な女じゃなかったよね?
トイレの手洗い場で、冷たい水を何度も顔に浴びせる。
最悪なことに、今日持ってきたハンカチは水気をあまり吸い取らない。
「はぁ……」
目の前の鏡に映った、憂鬱そうな顔をしているあたし。
ダメダメ、こんな顔しちゃ。
いつも笑ってたじゃん、あたし。
一人、鏡の前で笑顔をつくるあたしは、傍から見ればすごく怪しい人間だ。