「あ! やっと帰ったー」
愛美の弾んだ声につられて笠原くんの方を見る。
成美ちゃんが幸せそうな顔をして、笠原くんに手を振りながら教室を出て行く。
「よーし、愛しの章吾ちゃんがやっと解放されたっ」
愛美と同じように弾んだ声で、聡くんが笠原くんの方へと駆け寄っていった。
その後ろ姿をじっと見ながら、愛美が口を開く。
「あたしさ、翠川に教えてもらったんだよね」
「なにを?」
「あんたたちが付き合っている本当の理由」
親友でもある愛美にさえも打ち明けていなかった、聡くんと付き合っている理由。
あたしが聡くんと付き合い始めた時、愛美は安心したように言ったんだ。
『やっと目が覚めたね。笠原はやっぱり無理だよ』
……って。