「まぁまぁ、落ち着け、井ノ口」
一緒にいた聡くんが愛美を落ち着かせるようにして言う。
愛美は口を尖らせながら「だって!」と、文句を並べ始めた。
「あれって、絶対に笠原のこと好きじゃないよ?」
「愛美……。成美ちゃんはそんな子じゃないってば」
「だろー? やっぱ井ノ口もそう思うか?」
あたしの言葉なんか無視して、聡くんと愛美は一気に盛り上がる。
二人の会話に口を挟んでも、あたしの声なんて耳にも入らない様子で……。
聡くんも愛美も、あたしのことを気遣ってるの?
成美ちゃんが本気で笠原くんを好きじゃないなんて。
あたしにはそうは思えないよ……。
好きでもない人と付き合ったり、あんなふうに毎日のように教室にまで会いに来たり。