「あの……」
切り出そうとした瞬間。
笠原くんはガタンと大きな音を立てて、イスから立ち上がった。
前に座っていた翠川くんが慌てた様子で「やばいよー」という表情であたしを見る。
笠原くんは、さっきまで楽しそうに話をしていた翠川くんを置き去りにして、そのまま教室を出て行ってしまった。
「まったく、相変わらずだなぁ……」
愛美と同じように、翠川くんは呆れた顔で溜息をつく。
笠原くんの、あたしに対する態度はもう慣れているはずなのに、やっぱり目の前で露にされるとショックを受けてしまう。
「もうさぁ、章吾のことは諦めた方がいいんじゃないの?」
「……あたし、そんなに嫌われてる?」
そう聞くと、翠川くんは気まずそうに小さく首を縦に振った。