「どうした?」



笠原くんは優しい顔で、成美ちゃんを覗き込む。

成美ちゃんはバッグから携帯を取り出すと、慌てたように言った。



「お母さんに、今夜のドラマ録画しといてって頼むの忘れてたー」

「今夜のドラマ?録画なんて帰ってからでいいだろ?」

「だってー、何時に帰るか分からないじゃない!」



困ったように言う笠原くんを前に、成美ちゃんは少し膨れっ面で携帯を指で操作する。



「成美ちゃん、ここは携帯禁止だよ?受付のところで電話しないと」



黙って見ていた聡くんがそう言うと、成美ちゃんはバツが悪そうな顔をする。

そして、笠原くんに「すぐに戻るから」と言い残し、足早に立ち去って行った。



「……俺、ちょっとトイレ行ってくるわ」