「電話でいいのに」
「いや、ちゃんと会って話そうと思ってさ」
裏庭のすみにある大きな木の陰に腰を下ろすと、あたしと翠川くんは、目の前にある白亜色の校舎をぼんやりと眺める。
「……話って?」
あたしが切り出すと、翠川くんは校舎から視線を外して、地面に広がる青々とした雑草をぷちんぷちんとむしり始めた。
「章吾さ、彼女、できただろ?」
「……うん」
話って……、笠原くんのことか。
もう現実を受け止めているから、そっとしておいてほしい。
そんなことを思いながらも、あたしは話にストップをかけずに相槌を打ちながら聞く。