電話の相手は翠川くんで。

あたしが「どうしたの?」と聞くより早く、翠川くんは用件だけを簡潔に言う。



「……学校に?」

『うん。待っているから』



学校の裏庭に来て。

翠川くんはそう言うと、電話を切った。


夏休みに学校に来いだなんて。

いったい何の用だろう。

疑問を抱えつつも、あたしは出掛ける準備をして学校に向かった。


クーラーの効いた家の中と、じりじりと太陽が照りつける外。

その温度差に、一瞬だけ、くらりとする。


暑いなぁ。

用事なら、電話でもいいのに……。