ただそれだけのことなのに。

胸がドキドキして、笠原くんの方をじっと見つめる。


笠原くんは、やはり中学時代からの親友・翠川聡くんと雑談していた。

机の上には雑誌のようなものが広げられていて、それを見ながら楽しそうに笑っている。


今あたしのこと見たんなら、もう一度こっち見てよ!

せめて、あたしと目を合わせてよ!


目を凝らして、『こっち見ろ!』とブツブツ呟きながら突き刺すような視線を笠原くんに送る。


すると……。

祈りが通じたのか……。

笠原くんが笑いながら、愛美が言ったとおり確かにあたしの方を一瞬だけ見た。



「ほら、見た!」

「えっ、何だろう。なんで見たんだろう?」



胸のドキドキはピークに達する。

嬉しいはずなのに、目が合ったという緊張感で胸がムカムカしてきた。