あぁ、そうか。

いまなら分かる気がする。


あの日、あたしに向けられた笠原くんの笑顔と言葉。

あれはきっと……

「彼女ができるから、最後くらいは相手してやろう」

そんな気遣いだったのかな。


ひょっとして、翠川くんもそれを知っていたから……。

だから、あんなことを突然言ってきたのかな。



「……由香……」



言葉を発しないあたしを、愛美が心配そうに見る。



「あ、そっかぁ。彼女かぁ。成美ちゃんっていうのかぁ」



涙がぽろぽろとあふれだす。

それなのにあたしは、幸せそうな笠原くんの笑顔を見て笑う。