笠原くんはすぐには言葉を返さず、黙ったまま雑誌をぱらぱらとめくり続けている。
やっぱり、ただの気まぐれだったのかな。
たまには尾関と話してやろうか……って。
「――悪い。夏休みの予定はまだ分からないから」
顔こそ見てくれないものの、笠原くんははっきりとそう返した。
しかも、「悪い」だなんて侘びの言葉も入れて……。
夏休み、笠原くんと会いたいと思っていたけれど。
こうして会話できたのだから、もうそれで十分だと思えてきた。
だけど、もしかしたら、もしかしたら……。
「じゃあ、暇な時に連絡して」
あたしはいつも持ち歩いている、携帯の番号とアドレスのメモを笠原くんに差し出した。
もしかしたら、連絡をくれるかもしれない、と。