間近であたしを見た笠原くんの視線と、あたしにだけ向けられた返事。

胸の鼓動は、ドキドキなんてかわいい音を通り越して、ドックンドックンと大太鼓を打ち付けるような激しい音を立てる。



「喋った……、喋ってくれた」

「うるせぇよ」



どうして、あたしと話す気になったんだろう。

そんなことを思いながら、嬉しさのあまり涙がぽろぽろと零れ落ちる。


あぁ、ダメだよ。

泣いたりしちゃ、うざい女だって思われる。

本当は思い切り泣きたいけど、そんなことしたら振り出しに戻ってしまう。

あたしは慌てて涙を拭った。



「夏休みなんだけど……、よかったら一緒にどこかに行かない?」



さっきまで一方的に誘っていたくせに、あたしはきちんと改まって笠原くんを誘う。