「おかえり、笠原くん」



あたしの声で、遅れて反応したアンテナ。

スッと笑顔が引くけれど、それは今まで見てきた険しい顔つきには変化しない。

表情のない、普通の顔。



「――ただいま」



雑誌を意味もなくめくりながら、笠原くんはぼそりと呟いた。

低い声でそう言った笠原くんの言葉に、身体が熱くなる。


いまのは……空耳?

「おかえり」と言ったあたしに、笠原くんは「ただいま」と返してくれたけど。



「……笠原くん、いま……」



信じられない気持ちで口を開くと、笠原くんはあたしの顔をちらりと見る。



「なんだよ」