あたしはあたしのままで、直球で勝負することしかできない。


笠原くんはうんざりとしたような顔で、いつものように無視している。

休み時間にいつも読んでいるファッション誌を、ぱらぱらとめくる笠原くんの大きな手。

この手があたしを受け入れてくれる日が、いつかはやって来るのかな。



「一緒に海に行かない?」

「………」

「遊園地とかもいいよねっ?」

「………」



断る言葉さえも出てこないって分かっているくせに、それでもあたしは誘う。

ナンパ男のような軽い誘いかもしれないけれど、あたしはいたって真剣だ。



「なに?笠原と尾関って付き合ってんの?」



そんな声があたしの背後から聞こえてくる。

すぐ近くの席の男子が、笠原くんを誘うあたしの声を聞いて驚いたような顔をしていた。