入学式の時に渡した、あたしの携帯の番号とアドレスのメモ。
笠原くんから連絡はこない。くる気配さえもない。
きっと、捨てちゃったんだろうな。
あたしの制服のポケットには、何枚ものメモが入っている。
いつでも笠原くんに渡せるように、自分の携帯の番号とアドレスが書かれたメモ。
渡すたびに捨てられるのは分かっている。
笠原くんに嫌われることも分かっている。
だけど……。
直接、笠原くんの本音を本人から聞いたわけじゃない。
だから、もっと頑張れば、希望が見えてくるような気がするんだ。
「ねっ、笠原くん。もうすぐ夏休みだね」
愛美が教えてくれた『押して、押して、引く』作戦。
成功したから、あたしはいつもの調子で笠原くんに接する。
やっぱり、演技を必要とする作戦なんて、あたしには無理だ。